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後悔
胡桃は重い足取りで、家路につく。
電車の中で、携帯電話をふと見ると、篤史からメールが来ていた。
『胡桃、体調は大丈夫?(>_<)
あと連絡ください』
心配そうな…篤史らしい、短い、メール。
胡桃は祖母の件で、罪悪感でいっぱいだった。
優しい、暖かい、篤史。
比べて自分はーー
『篤史、今までありがとう。
私、最低の、汚い人間です。
もう、付き合えません。さようなら』
胡桃は返信すると、すぐに携帯電話の電源を落とした。
ーーあんなに暖かい篤史に、こんな自分はふさわしくないから。
大事にしてもらった家族の恩も忘れるような、こんな自分は…
もう、別れよう。あんなにいい人間の篤史には、ちゃんと幸せになってほしい。篤史には、心のきれいな女の子が、きっと似合う。
篤史とのことはもう考えないように、と思ったけれど、やっぱり涙がにじんだ。
電車の中でうつむき、ハンカチでは足りず、パーカーの袖で何度も顔を拭いて誤魔化す。
ーーおばあちゃん。
これからはもっともっとお見舞いに行くね。
おばあちゃん、ホントにダメな、冷たい、最低の孫で、ごめんなさい…
お母さんも、未来も、ダメな姉で、冷たい娘で、最低の家族で、ごめんなさい…
私は何を思いあがっていたんだろう…
電車から降りると、春雨が降っていた。
優しく、弱く、細い雨。
今は濡れるのが気持ちよくて、胡桃は暗くなり始めた道路をとぼとぼ歩いた。
ーーあー…悲劇のヒロインみたいに自分に酔ってるのかな…
でもホントに。このまま溶けてなくなればいいのに。
人に、大事になんかされる価値もないのに…
ごめん。
…ごめん。
何回言っても、足りない。
ごめんなさい…
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