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「ごめん」
「え? なんで?」と、樹から戸惑いの声が聞こえる。
「だって、君は俺の年齢知らなかったわけだし、それなのに勝手に怒っちゃって、怒鳴ってしまって。本当にごめん」
「ちょっと、顔上げてくださいよ。お兄さん」
肩を掴まれ、下げていた頭を起こされる。すると、自分が謝っているはずなのに、目の前の樹の方が申し訳なさそうな顔をしていた。
「なんで、君がそんな顔をしてるの?」
「えっと、俺、反省したんです。だって、知らないからと言って人を傷つけてもいいってことじゃないから」
あれは完ぺきに八つ当たりだった——なのに……と、樹の真っ直ぐな瞳に耐えきれなくて、目を逸らす。
「でも、会えてよかった。俺、昨日のことを謝らないといけないって、思ってたから」
再び「ごめん」と告げる。
「それはもう無しで。お互い謝るの繰り返しちゃうでしょ」
「でも……」
「『でも』も、禁止です。もう、この話は止め。それより、お兄さんの名前教えてください。お兄さんって呼ぶの変ですし」
「え? 俺、名乗ってなかった?」
コクンと頷いた樹に向かって「ユキ」と伝える。
すると樹は、ユキの銀髪を指先でふわっと触れてきた。
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