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助けを乞う人が居ればいいのだが、ユキの周りにはいなかった。
ユキの母は、10歳の時に病気で亡くなっている。
そして、父は妻の死が受け入れられずに棺桶に閉じこもり、それから20年、一度たりとも外に出てきていない。
それでも月に一度、湿気ないように両親の部屋の押し入れの中にある棺桶の蓋を開けて換気する作業をしているから、かろうじて顔を忘れずに過ごしているのだが。
これで優しい祖母までいなくなったら、本当の独りぼっちになってしまう。
それだけは、どうしても避けたかった。
こんな中途半端な自分を「ユキちゃんの髪の毛、銀色で綺麗だね。目も、透き通って。これは、心がキレイな証。だから、自分を誇っていいんだよ」と、半端な自分を認めてくれた。
だから、もう二度と大切な人は、失いたくない。
「ねぇ、どうしたら元気になる? 俺は、生き物の精気を吸うと大抵の病気は治るけど、人間はそうもいかないんでしょ?」
鉄分豊富の吸血用非常食なら常備しているし、生き物の精気が必要なら、猫とかなら連れて来ることも可能だ。
でもそれは人間には効かないということは、世間知らずのユキでも知っている。だから余計に力になれないことが辛い。
「俺に出来ることなら、なんでもするのに……」
祖母の枕元にちょこんと座り、じっと顔を見つめた。
顔を真っ赤にし、苦しそうな姿を見ていると自然と涙が溢れてくる。
すると、熱い指先がユキの目尻の涙を拭った。
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