雪を融かす一匙の蜜(1)

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 玄関を出たユキは、雲の切れ間から陽が差すのを眺める。 「3月なのに、昼間って意外とポカポカして暖かいな」  日中に外へ出たのは、物心ついてから初めてのことだ。体の弱いユキは、日差しの強い時間に外出を禁止されていた。  ——なぁーんだ、大丈夫じゃないか。  人間のように昼間に歩いていることが嬉しくて、つい鼻歌を歌ってしまう。  ユキはご機嫌になりながら、ドラックストアに向け歩いていた。  ーーえ?  心臓が激しく波打ち始めたユキは、急いで胸元を押さえ立ち竦んだ。 「嘘でしょ? な、なんで……」  その場でしゃがみ込み「非常食を食べなきゃ」と、肩にかけていたトートバックの中を漁る。  手探りで探しても埒が明かなかった為、道路の片隅にカバンの中身を並べていく。  すべて取り出し終えたユキは、愕然とした。 「な、ない……」  曇り空だからと、軽装で出てきた自分を責めた。  このまま倒れたら自分はどうなってしまうのだろうか。  アスファルトに手を付き、肩でハァハァと苦し気に荒い息を漏らしながら不安に駆られていた。 「お、おばぁちゃんを助けたかっただけなのに、俺は……」  このまま、この場所に留まっていてもいい事は一つもないのに、力が入らず動けない。  自分の無力さを痛感していると、ユキの頭上から「大丈夫?」という声が降ってきた。
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