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真っ青な顔で声の主を見やる。
そこには、ユキよりだいぶ体格のいい男が、心配そうな眼差しで佇んでいた。
うまく返答が出来ずにいると「立てる?」とひと声かけられ腕をグイッと引っ張られた。
「わっ」と、驚きの声を上げるも、体の力が抜けて思うように立てない。
そんな様子を見かねたのか「ちょっと待ってて」と、道路に散らばっていた中身をすべてバックに詰め込み、肩にかける。そして、そのままひょいとユキを持ち上げた。
「え、えっ?」
お姫様だっこをされている自分の状況に戸惑っていると、男は笑顔でユキの腕を取り自分の首に巻き付けた。
「こっちの方がラクだから」
「ラ、ラクとか、そういうのじゃなくて……」
ーー恥ずかしいんだって。俺、男なのに。
ユキの言葉を聞いていないのか、そのまま話を続ける。
「あんた、貧血かなにかだろ? とりあえず、掴まってなよ。その方が安定するし、俺も運びやすいから」
「でも……」
男は「ほら」と言いながら、もう少し強く掴めと言わんばかりに腕を握ってくる。
しかたがなくユキは、腕を首に回し、男の首筋に顔を埋めた。
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