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ーーん?
確認するようにユキは男の首に鼻をつけ息を吸い込む。
ーーなんだ? この匂い……。
今まで動物の精気として一度も嗅いだことのない猛烈に甘くて、蕩けそうな匂い。しかも、体の奥底から力が漲る感覚に戸惑う。
ーーどうして、俺はこの人の匂いでこんなに……。
夜な夜な外に出ては、猫や犬の精気を吸っていたが、こんな感覚に今までなったことがない。
それを裏付けるかのように、さっきまでフラフラだったユキの体は、家の玄関を出る時以上に元気を取り戻していた。
ーー不思議な男だな。
ユキは、首筋に埋めていた顔を上げ、抱き抱えてくれている男の顔を見つめながらおずおずと訊ねた。
「あの……。きみは、なに者?」
「はい?」
この甘い匂いの正体を確認したくて発した質問だったのに、どうやら的を得なかったらしい。
どう尋ねたら、自分が望む答えをくれるのだろうと思いながら、再び口を開く。
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