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神様のギフト
和奏にとって、雄二の夏休みのある8月は悪夢だった。休暇中、三食料理でもてなせと命じられるからだ。雄二の口癖は『誰が食わせてやってると思ってるんだ』。
8月は夏祭りも夜店もあり、街は夏らしい赤青黄などのビタミンカラーで飾られるが、和奏は下品な色だなと思っていた。
和奏はダイヤリボンで担当を変えることを何度か試みた。
しかし相手が誰でも同じ展開だったので、担当を浩司に戻した。
そして暴力を訴えるのをやめた。
彼女がダイヤリボンに向かった朝は、ただでさえ暑いのに、日陰になる雲すらない日だった。
通り道で幼稚園児の集団散歩に出くわす。
和奏と園児たちでは、同じ風景、気候でも受け取り方が違うようだ。
幼稚園児たちは黄色い帽子にスモッグ姿で、暑い暑いと言ってじゃれあっていた。
付き添いの先生たちが、「静かに」と呼び掛けて、手を焼いている。
ダイヤリボン到着。和奏は浩司と面談した。
「もう名前で呼んでくれないんですよ。一日中ブタって呼ばれるんですけどね、よくあることじゃないですか」
「そうですね! よくあることですね!」
浩司は、物分かりの良くなった和奏に、たった今大便が出たというような爽快な笑みを浮かべて喜んでいた。
第二月曜日、少し湿気があって不安定な日だった。
和奏は浩二と面談した。
「死ねって言われるんですけどね、よくあることじゃないですか」
「そうですね!よくあることですね!! 僕のお母さんなんか、もっとすごいですよ!!」
「どんなお母さんですか」
「それがね!」
第3月曜日は雨だった。
すっかり日の沈んだ頃、和奏はダイヤリボン閉館ギリギリの時間に滑り込もうとして足早に歩いていた。
紺のレインシューズは何年も前のもので、すでに壊れかけている。
和奏がシューズを新調しないのは加害者に攻撃されるからというのが直接の理由だが、そうでなくても見た目のメンテナンスをしようと思わない。
戦場の被害者に余裕は無い。
開館時間に間に合った。
浩司と面談。
「毎日レイプされるんですけどね、よくあることじゃないですか」
「そうですね!よくあることですね! 僕なんか年中妹にいじめられていますよ!」
「どんな妹さんですか」
「それがね!」
浩司ははつらつとしていた。
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