神様のギフト

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 浩司はスポーツが好きで、ジムに通う他に、ヨガもやっていた。今日はヨガの日。浩司はウキウキして退社時刻を迎えた。  ヨガ教室は、リラックス効果があるとして、青い花や、水色のカーテンで美しくまとめられている。  憧れの女性講師はいつもはつらつと元気で、女性的な魅力に溢れていた。今日も彼のために笑ってくれている気がする。  彼は和奏の事を考えると天にも昇りそうだった。  人助けをすると助けられた方が助けた人を好きになるというが、実際は助けた人が相手を好きになるという説もある。  彼は和奏を助ける時間があまりに幸福で、和奏もきっとそうだ、だから両思いだと想像していた。  同日、和奏は帰宅後、トイレでゲーゲー吐いた。  浩司のカウンセラーをやらざるをえなくなったからだ。  後は雄二の作った彼女の日課で、一日三回、桃色の体重計に乗る。  重量は激減したが、意識はまだはっきりとしているので、彼女は自宅とダイヤリボンでの被害記録をブログに書いている。  雄二は彼女のメールとダイアリーを四六時中監視していた。  しかし、彼女はアプリを使わず、ブログ記事を書き終えるとすぐさまログアウトしていたため、雄二にアカウントの存在を知られずにすんでいた。  第四月曜日。  台風直撃の三日前。屋外では、今から強い風が猛威をふるっていた。和奏は晴れてる時にダイヤリボンに足を向けたが、途中で雷雨に見舞われ、センターに着いた時はずぶ濡れだった。  浩司と面談。  「一日二食しか食べたらダメって言われてるんですが、さすがにお腹が空いてね、コンビニで食パン買って帰ったら、主人に摘発されて、食べられなかったんです」  「あははは、摘発ですか! 面白い夫婦ですね!! 聞いてくださいよ。僕のおばあちゃんもそんな感じだったんですよ」  和奏は血が引く思いでこう返した。  「どんなおばあちゃんでしたか」  「それがね!」  被害者はカウンセラーや相談員に向かって、あなたの話、興味ないとは発言できない。  浩司にはそれがわからない。  その時、爆音と一緒に二人の間に誰かの声が割って入った。  「あっ、ごめんなさい」  椅子から跳ね飛ばされた浩司は淡いオレンジの屋内清掃車に、あっさり轢かれていた。
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