神様のギフト

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 御門は彼女のそばに片膝をついた。  「沢田は何て言ってる?」  「逃げればいいんだって言ってる」  「何て言い返す?」  「逃げたら雄二が追いかけてくる」  御門は更に訪ねた。  「沢田は何て言ってる?」  「戦えばいいんだって言ってる」  「何て言い返す?」  「戦えたら暴力って言わない」  「何て言ってる?」  「加害者は無視すればいいんだって言ってるーー沢田、私の分担ばかり考えてる」  「どう思う」  和奏は温かい湯をぶっかけられたような気持になった。  脳内の霞が晴れた。  「沢田、加害者病だ。相手したらおかしい」  御門はにっこり笑った。  「そうだね。病気じゃない人、いるよね。必死になって沢田や八幡に食らいついてるの、大変だよね?」  和奏は憑き物と別れて、まぶしい御門を見上げた。闘神マーズもこんな美貌だろうか。  「ありがとう御門さん。あなたはお医者様ですか」  「普通のおにーさんですよ。ジョーカーにはおれより上がいっぱいいます」  御門が立ち上がる。和奏は続こうとしたが、しりもちをついた。  「どうしましたか」  「立てない」  御門は和奏の前にかがんだ。  「腰が抜けましたね。あなたは少し栄養を取ろう。ジョーカー本部に来ていただけますか? 静養ルームがあります」  「はい」  「よいしょ」  御門は和奏を荷物のように担ぎ上げた。  お姫様抱っこではなかったので、和奏は最後に釈然としなかった。でも、よく考えたら粗暴なマーズはお姫様抱っこなんか知らないだろう。
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