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レッドマンの言い分
浩司は病院の遅い夏休みがあけ、9月に入ると、あっさり退院した。
事故のけがは出血が派手だっただけで、軽傷で済んだ。自分の株を全て持っていった憎らしい清掃員はどうしてるだろう。今度会ったらとっちめてやる。
彼は昼の仕事始めと同時に、深夜はレッドマンの赤い装備に身を包む。
星がきらめき、残酷な夜の空気が冴えわたる中、彼は窓を割ってDV現場に飛び込んだ。
加害者をゴム弾で攻撃して泣いて謝るまでぶん殴る。
その時だった。
「HIレッドマン!」
「誰だ」
「おれは凪。時間の神だよ」
レッドマンに続いて、被害者宅窓から現場に入って来た者がいる。彼はレッドマンと手負いの加害者の間に立って小悪魔のように微笑んだ。
二十代くらいでレッドマンと同じ夏装備。
神というより美しい悪魔のような容貌で、シルバーと淡紫ーーヘリオトロープの衣装にマントを羽織っていた。
ユニセックスなスタイルの髪に、女性がするように大ぶりの花飾りをつけている。
レッドマンは凪とどこかで会ったような気がしたが、いつだったか思い出せなかった。
驚いている間に、黒装束の人物が凪に続いて数名現れ、一瞬にして被害者をさらって行ってしまった。
凪は笑顔で言った。
「おれも深夜に法が裁かない悪を倒している。レッドマンと手を組みたいんだ」
「なるほど。面白いな」
凪はパチンと指を鳴らした。
舞台が変わって、二人は一軒家の前にいた。
窓から30代くらいの夫婦が見える。
男性の方が女性を虐待していた。
凪は言った。
「被害者は友田優里恵。DV現場だ。レッドマンはどう対処する?」
レッドマンは現場に飛び込んで行った。
ゴム弾で加害者を攻撃する。
「お前が悪いんだろ!! 被害者は悪くないじゃないか!! 恥ずかしい男だな!!」
レッドマンは仕事を終えた。
凪と二人で一軒家を後にした。
凪はマントの中にサーモンピンクのタブレットを仕込んでいて、それを開いて眺めながら歩いていたが、ある時声を上げる。
「あっ、駄目だ〜」
ベルトのバックルがお釈迦になった時のようなアクション。
レッドマンが訊ねる。
「何が」
凪はタブレットから目を上げ、レッドマンを振り返って言った。
「優里恵さんが報復に遭って死んじゃった。お前のせいだよ」
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