死人に飛び蹴り、真っ赤に染まるクチナシの実

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死人に飛び蹴り、真っ赤に染まるクチナシの実

※時系列的には銃撃戦の後です。 とある老人が復讐に燃えていたころ、あるところでも事態は動いていた。 どんよりとした空、全てが灰色に染まった化のような街並みの中何かが近づいて来ていた。 ーーぶぉおおお 頭の悪そうな字面……ではなくて燃費の悪そうなエンジン音をたてながら黒塗りの外車が道路を爆走していた。 シャープというよりも重厚なフォルムに日本車に比べ無駄に長い車体。 貼られたヘビ皮のような座席が持ち主の趣味の悪さを醸し出していた。 乗っているのは白いジャケットに和柄のネクタイでもしたヤクザものであろうか。 白い煙をあげながら遥か遠くから走ってきた車体が見えてくる。 ハンドルを手のひらで回すナルシスト運転を見せる運転手。 そして前を見てない明らかな脇見運転。運転手はナニをしているのか片手を伸ばしながら何かを探しているようでまるで前を見ていない。 スピードがわかっていないのか、とても下道で出すスピードではない。風圧だけで道に捨てられていた空き缶を飛ばしとてつもない騒音を出しながら爆速して行く。 遅れてカランコロンと音を立てて転がる空き缶。 少し残っていた中身が溢れ道路に染みる。 危険な運転をする奴はどんなやつか、とのぞいてみればアラヤだステーキ♡ いや、素敵ではない。ステーキ肉になる牛さんのように太った人間がいた。 まるで牛のようなエンジン音を出す車に牛のような人間がッ!!なんたる奇跡! みるからにたるんだ脂肪にふっくらとした丸い顔、腕はバルーンアートのように膨れ、きっと触ればムチムチしているだろう。 ……赤ん坊ではない。最近無能扱いされつつある元外交官補佐のエリックだ。 車に乗るまでの間、暗殺者から逃れる為走り回り汗にぐっしょり濡れ、彼の一張羅であるシャツはピッチりと肌に張り付き体のラインを出していた。 うーん、これはたまらん。という人は少数だろう。 片方の手で何かをしていたのは武器がないか探していただけでナニもしていなかった。汗でグッショリ濡れているのも何もやましいことなど………いや……否定は出来ないが、そういうことはしてなかった。エリック、ごめんよ。 だが彼はそれなりの年だと相まってなんとも言えないオヤジ臭を放出していた。 娘がいたならば、"きゃーパパ臭い!"と言われ精神的にダメージを受けているだろう。 シルエット的には思わず抱きしめたくなるようなフォルムとそこから発生するなんとも言えない悪臭は凶悪コンビであるといえよう。 マスコットキャラクターみたいな見た目をしているのが悪い。 エリック痩せろ。 ソビエト連盟から支給されている《いかなるカーでもエンジンがかかる最強のチェムノター鍵》という最近のラノベのような長さとカタカナ使わないと死ぬ病気に侵された化のような名前のなんか凄い鍵である。 これを使いヤクザから、正確にはマフィアから車を奪い走らせているエリック。 日本で過ごし日本人の少しばかりお堅いタイプの意識が染み付いた彼にはこの意識高い系みたいなカタカナ語をふんだんに使った鍵の名前を呼び続けることが耐えられなかった。 それにこの鍵を知らない奴に名前を聞かれて正式名称を答えると"は?"とおかしなものを見るような目を向けてくるのも耐えられない一因だった。 悪口には耐性があるエリックは娘に臭いと言われる事に対しては大したダメージはなかっただろうが、まじめに仕事をしているのに一々この鍵のせいで馬鹿にしたような目で見られたり同情されたりするのが本当の本当に耐えられず、今日もまだ暗殺者に狙われていると気づくまではドブに捨ててやろうかと考えていたほどだ。 そもそも意識高い系の人が使っているカタカナ語も理解出来なかった。 アグレッシブなうんたらとか"な".って何だよとか思ったり、"そのコミット(約束)ちょっとウエイト(待って)して、まだ予定がフィックス(確定)してないから"なんて言われた日には同僚の日本人の頰をビンタしたのが懐かしい。 片方に日本人の親をもち英語圏で育ったエリックにはイマイチカタカナ語のかっこよさは分からなかったようだ。 てか、そんなに英語好きなら普通に英語話したら?なんて思っていたが、そうじゃないんだ、エリック……わかれ…!! さて、何度も言うがエリックはこの鍵の名前が嫌いだった。 そんな鍵をぶらぶら、ぶら下げ走る車。時より凹んだ地面を飛びガタンと揺れる車体。 運転手が太ってさえなければハリウッド映画のような映えるシーンも紅の豚(エリック)のせいで台無しだ。 いや、実際スパイの逃走劇で、イケメンとかないだろうし、ただのデブのおっさん出ないだけエリックはマジであろう。 妙に上手い、それから誰に向けたものなのかやけに格好をつけた運転で、ドリフトをしながら街角を曲がる。 相変わらず片手で掌でハンドルを押すような方法でである。 ーーキキキキッ……!! 激しくゴムが擦れる音を立てて曲がる車。 ざらりとしたアスファルトに白い線を残して行く。 バックミラーを軽く電柱にぶつけているのだが自分に酔ったエリックは気づかない。 暗殺されそうで逃げていた割に余裕である。 流石熟練のスパイというべきか。 普通だったらもう少し目立たないように逃げたりするだろう。 いくら周りに人や車がいないからと言って市街地を速度85kmで爆走していいはずがない。 アメリカならともかく。……いやそれは映画だけか。 〈PPPPP.PPPPP.PP〉 「もしも「エリックだ。なんかようか」 どうやら電話が来たらしい。 ピピピと高音の着信音がなり電話を持ったことによりついに両手放し運転に進化したエリックは最早無敵である。 ……車をなんだと思っているのか、しかもアクセルを強く踏んでいるものだから85kmを超えたり戻ったりを繰り返している。 こんなので轢かれたものならひとたまりもない。 「いや、用がないのにかけるわけないだろう」 「それもそうか」 「俺はお前と違うんだぞ、誰が潜入任務の報告でディナーが美味しかったとか、暗殺者任務中に賭けに負けて芋虫を…」 「あー、もうはい。わかったから。でなんのようなんだ?」 エリックは不真面目だった。 暗殺者任務中に賭けに負けたというのは、以前も話したことがあるが、彼が大使館に勤めていた際に都合の悪い人間に冤罪を着せて本国送りにする途中で組織の息のかかった海軍、それも国境警備を任されている船に乗り込み輸送船に魚雷を打ち……誤射した時の話だ。 バッシャン!バッシャン!どデカイ水しぶきをあげとにかく壮大に暗殺して見せた彼は何発で沈められるかの勝負に負け、補給で立ち寄ったロシアの港の木にいたよくわからない緑色の芋虫を食うことになったのだ。 せ、せめて茹でさせてくれ。 そう言って茹でた芋虫を口の中にいれ咀嚼し、あれ?意外といけるわとか言いながら馬鹿騒ぎしていた所為で報告を忘れていた。 あまりに遅い、待てど暮らせど来ない報告に何かあったのではと焦ったオペレーターが、緊急の回線を使いエリックに通信を入れてきたのは仲間達全員で芋虫を茹でて食べていたところだった。 何が起きてそんなことになったのか、酒が入っていてよく覚えていないエリックは慌てた声で繋がった通信に、"へへへ、今芋虫食べてる"と返した話のことなのだが、そんな感じで思ったよりもいい加減なことをしているエリックであった。 だというのに鍵のせいで真面目にやってないと言われると怒っていたのは筋違いだと思う。100%お前のせいだよォ! 「お前も知っていると思うがお前を救出に展開中だった部隊が公安の手の者によって追い立てられて銃撃戦に発展した。これは知っているか?」 「知らない」 「まあ、知っているとおもうから……は?」 「知らないんだが詳しく」 「は?まあ、いいか。その後よくわからない白服の集団に攻撃され退けたんだが少々予定外のことがあった」 「いや、教え……今はいい。後で教えろ」 「ああ、合流は地下下水道でな。マンホールを開けておくからちゃんと来いよ。飯とか食べてくるんじゃないぞ?」 「いくらなんでも、そんなことするわけないだろ」 「いや、芋む…」 「うん、はいはい。それからなんかまだあるわけ!?」 「ん?今運転中か?」 「ああ、運転中」 「だったら前を見ろよ、あとスピードは常識の範囲内でな。あと人を轢くな、暗殺者でもあとあと問題になる」 「おーらい、おーるおっけいだ」 「本当か?」 いや、本当か?本当にオールokなのか?! 前見てないし、常識の範囲内が時速85kmっていうのは…その……。だめだこいつ。 「お前は私の母親か?」 「え?違うけど」 このネタは通信相手のオペレーターには通じなかったらしい。 「いくら母親が行方不明だからと言って 男のお前にそんなこと言うとおもうか?」 「ないな、なら」 「いやこれ、日本だとよく言う冗談なんだ。アレした?コレした?って色々聞いてくる奴にたいして、母親のようにお節介をしてくるというたとえだな」 「ん?俺の母親はナタで畑に入ってくるヘラジカを退治してたくらいで構ってくれなかったぞ?」 「そりぁ、おまえんところだけだ」 「そうか、いやすまんついつい話が弾んでしまったな。そろそろ上司に怒られそうだから話しを戻すがいいか?」 よくやく戻った話。本当、どこにそんな余裕があるのだろうか。 「どうぞ」 「は?いや……ああ」 いきなりまじめになったエリックに肩透かしを食らったオペレーターは眉をひそめたが話を続ける。 「ジェニー、ロニー、ザブが死んだ」 「ジェニー?ジェフじゃなくて」 「あ、そうだった」 「ロニーじゃなくてロフじゃ…」 「いや、いい加減なこというな」 ついつい余計なことを言うエリック。彼の為に間接的にだが命を落としたものがいると言うのにこれである。もう死んだ方がいいんじゃないだろうか。 それにしてもロニーが…… と悲しげに呟いた彼にオペレーターが返す 「あれ、仲良かったのか?あいつと」 「いや、ハゲネタがもう出来ないとなるとな……」 「不謹慎だぞ!!」 といいながらも「たしかにこれは組織の損失……(ボソ」 と聞こえた気がした そして丁度目をつぶって十字を切りロニーに祈りを捧げていたエリックは何かから逃げるように道角から飛び出して来た人影を轢きとばした。 いや、轢いてかなり進んでから気づいたエリックは死んでるかわからない相手に十字を切ってそのまま逃げたのであったから最悪であった。 そして異音に気づいたオペレーターに今なにか轢かなかったか?と問われるも、いやちょっとパンクしたなどと嘘をついていた。 xxx 公安にも色々ある。 いやそもそも怪しいことをやっているのなんて、"国家安全保障機密保全委員会"とかいう活動内容が不明の割に予算を削ってくるあのいけ好かない奴らくらいだ。 あいつらの所為でドラマや小説に後ろ暗い組織みたいな役で書かれるものだから溜まったものではない。 しかも仲間でも平然と裏切るってのも許せない。 たしか奴らも職務怠慢エリック君との組織と仲間だったはずなのに急に裏切ってしかもこれから殺すけど見なかったことにしろなんて、はいそうですか。なんて言えるわけないだろう。 それにだ。なんだあいつ……"国家安全保障機密保全委員会"長いから安保って略すが、奴らが雇ったとか言う殺し屋が軽すぎる。 え?いや、これはない。 なんだよ、殺し屋なんてまぁ後ろ暗くはないが捜査上、そういう奴らと会うことがあるのだが初めてだこんな頭のネジが外れたかのように馴れ馴れしいやつ。 そもそもわかってるのか!? 俺たちは連続殺人やテロリストなど凶悪犯罪者を捕まえる任務を普段やっているんだぞ! なのに、なんなんだよこいつ! "おーす、あ、キミたちが今日の人?じゃ後ろは任せたから俺っちはドカンとやらせて貰うからなぁー" なめてんのか!って思って話してみたが素らしい。いや、とんでもない。 なあ、そう思うだろ!? X X X side 桶川 ……そうマシンガンのように返事を挟む隙すら与えられず耳元で叫ばれたオレは頭が痛くなっていた。 いや、どうしてこうなった…… 確かに行ったさ、新人の挨拶で何か言わなきゃって思って印象良くなるように人と話すのが得意とか、どんな人とも仲良く出来るとかさ。 言った、言ったけどさぁ! 酷いのはアンタだよ! ざっけんな! 人には許容範囲ってもんがあるんだ! オレはカウンセラーじゃねー! どいつもこいつも、メールに電話、所構わず話しかけて来て、しかも深夜にもかけてくるわ!非常識。 しかも返さなければ無視されたあいつ最低とかいうし、オレはお前らの先生じゃない!お前ら、オレより年上だろ! いい感じに頭剥がしちゃってよ、そんな歳にもなって桶川、お茶。桶川これやって?桶川、パソコンが起動しないんだけど?桶川、こないだ彼女と喧嘩しちゃって…桶川、桶川、桶川 ぁぁぁぁああああああ!もうやってらんねー!ふざけんなシネ! 何が公務員になったらモテるんだ?あ?おっさんにモテてどうするってんだ! しかも、あんまりにも所構わず話しかけてくるもんだから職場の女子たちに変な噂まで立てられてこっちは迷惑なんだよ! この前何かなぁ!合コンに参加したら、え?桶川くんって……課長(おっさん)といい関係にあるんじゃなかったの? とか本気で言われたからな。 ざっけんな、誰だよ噂流しているやつ! 受け、とか攻めとかオレを見て言うのやめろ!! ぁぁぁぁ! "桶川、お茶"くらいなら許す。 部下が上司に注ぐのは伝統だからな。 オレより下っ端の癖に呼び捨てすんじゃねーよカス!この常識なしのカスめ! "桶川、これやって"おーけ、おーけ。 上司から意味わからないが仕事を押し付けられる行為も定番だ、この桶川がやりましょう。 ん?これすか。え?まじ、いやいや。は?……こぼしちゃた。じゃねーよ!!テメーざっけんな、オレはお前の世話係じゃねーんだよ!何にもせずにコーヒー飲んで人に迷惑かけてシコって寝てるテメーの世話なんて金もらってもやりたかねーんだよ! なのに自分でこぼしたコーヒー拭いてってガキか!自分でやれやカス。 そう思いながら結局拭く。オレエライ。 "桶川、パソコンが起動しないんだけど?"おーう、困ったな。それは大変だー。 で、しないんだけど?なんなの? オレはそのパソコンを売りつけた電気屋でもなければメーカーの人間でもない。 てかお前部署ちげーだろ!誰だよ、お前ぇ!!雑用じゃねー!いきなり来てやって?ってざっけんな。金払え。溜め込みやがってカス。テメーみたいなやつのせいで景気が悪いんだよ! しないんだけどじゃねぇーーだろ!お願いしますだろーがッ!! しかもオレより階級下じゃねーか! なんでも言うことを聞いてくれるオケカワチャンだと思ったら大間違いだ!テメー電気屋行って来い!この雑魚モンスター顔のカスが! え?部長に頼まれた?し、仕方ないな、直す……っていやこれ電池切れ。 え?電池さすところがない?いや、あのパソコンに乾電池なんて刺さないから。 は?え。知らな……マジか。充電コードって知ってる?ああ、知ってんの。 そう、それをな、コンセントに挿してな、それで………(ry "桶川、彼女と喧嘩しちゃって" うぉおおおお!!テメーだけは許さん!ふざけんなよテメー!クリスマスにナゲットでも食っとけカス! なんだテメー、ざっけんな当てつけか! オレが屑どものせいで彼女が出来ないのを知っていってんだろ! あ? 自分は悪くない?シネ。 お前がわりーんだよ! は?怒ってないけど? とにかくな女と、上司には理不尽なことを言われても謝っておけばいいんだよ。 わかるか? 女と男は考え方が、違うんだ。 だから対立もある。 つまりな、こっちが理不尽だと思っても向こうとしては正当な理由があんだよ。 んなこと言わずともわかれ。 それでも謝れねーんだったら別れちまえ!ついでに会社も辞めてしまえこの社会不適合者が!! 酷い?はっ、酷えのはテメーだよ! 今仕事中なんだよ! 見張りの仕事中なのにどいつもこいつもいい加減にしろ! なんだよ、車の中で介護してテメーにまで世話を焼くとかありえねーだろ! そもそもテメーが彼女作ったの、丁度仕事が一番忙しい時に有給取りやがったあの頃じゃねぇーか!! オレたちが命削ってテメーに彼女作らせてやったんだから簡単に別れたら殺す。 いや、生かさず殺さずオレに回って来ている仕事を押し付ける。 は?死ぬ? いまその死ぬ量をオレは一人でやってんだよ! は?何!?仕事辞めてフリーになる?馬鹿かお前、公務員だから彼女がいるんだ。そんなことしてみろ。翌日にはいなくなるぜ、だったらオレにくれよ。 お前みたいなヘタレよりは幸せにしてやれるがな。 てかな、次は電話掛けてくんな!わかったか? あとな、公務員がいいところは倒産せず適当にやってれば金もらえるんだ。 オレだって仕事内容自体はそんなにない。忙しいのは雑用であってあと、お前みたいなやつから聞かされるくだらねー会話だけだ。 無能なハゲデブの愚痴を聞くだけで金がもらえるんだ最高だろ? キャバとかホストみてえなもんだ。 あと、あれだ。 人の不幸は最高に笑えるってことだな。 っなことでお前も無難に生きてオレみたいに堕ちないよう頑張れよ……と 通信切れたか。 オレはなんの話を。くだらねえ。 はぁ、。 今日はあのエージェントが動いたとかでその計画の一環を見張るため、上司と黒い車に乗って監視しているんだが、全く素晴らしい手際でもんだ。 まさか女さらった現場で銃撃戦が起こるとはな。 しかも、殴られて置いていかれた男。オレも先程知ったばかりだが、アルバイトっていう形でコインロッカーに荷物を置きにいく仕事をしたらしい。 なんとなく想像がつくがな。 間に合ったら見に行くとしようか。 さて、隣に座っていたクズ……無能な上司は睡眠薬入りのコーヒーを迂闊にも飲んでしまったようで寝ているから、オレは自由にさせてもらうとするか。 専用の端末をポッケから取り出し画面を開くとそこには市街地をとんでもないスピードで走る車の衛星映像が流れていた。 そして車はここ、いまオレがいる場所に向かっているらしい。 オレの任務はこの暴走車を止めること。 無能な上司には爆発に巻き込まれてしんでもらうおうか、そこまで考えていたところで映像に興味深いものが映った。 こいつらは……たしか五右衛門ラッパーズ?だったか。の奴だ。 確か五味秋人にいいように踊らされている小悪党のグループの名前がそんなような名前だった気がする。 いいことを思いついたオレは道の反対側に渡り、警察服を着てこちらに走ってくる五右衛門ラッパーズ達二人に向かって叫んだ。 「貴方達大丈夫ですか!今、外に出ては危険です!我々警察が責任持って守ります!さあ!」 ヤッタァとか、助かったといい少しスピードを落とした彼らに呼びかける。 「急いで!もう近くに迫ってます!早く!」 くそ、と叫びながら全力疾走する彼ら。 「間に合って良かった。」 そう言いながら薄く笑ったオレに惚けた顔をする二人。 それが彼らの最後に聞いた言葉だった。 猛烈な勢いで突っ込んできた黒塗りの外車が二人を跳ね飛ばして何ごどもなかったかのように爆速していく。 はっははははははははは!! その場は血溜まりと、眠ったおっさん。それから高笑いするオレだけが残された。
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