女子高生

3/7
723人が本棚に入れています
本棚に追加
/1272ページ
 そんな思考が駆け巡る中、少しおかしいことに気づいた。被害者の女子高生は、駅長を呼ぼうとしないのだ。  その理由はすぐに分かった。  衆人の一人が「駅員さんを・・」と声を上げた時、一人の男が制止した。  いかにもごろつきと分かる服装、そしてその道の雰囲気を漂わせた男だ。  女子高生はその男に駆け寄り、腕に手を回し体を摺り寄せながら俺を指差した。 「おにいちゃん。この男よ! この男が、私の体をっ」  一目で兄妹でないことくらいは分かる。その類の男と女子高生、よくあるパターンだ。  すぐに、強請りたかりの部類だと理解した。同時に衆人が俺たちから遠のいた。彼らも強請りだと察知したのだろう。  男は、俺の女に何をするんだ、と強く出てきた。三千子の存在などおかまいなしだ。  状況は、こちらに不利だった。  男は、警察に行くか、それとも金をよこすかの選択を迫った。予想通りの恫喝だ。    なんてうっとうしい奴らだ!  そう思った時、俺の前で長い髪がふわりと揺れた。 「中谷くんは、そんなことはしないわ」  三千子がすっと前に出たのだ。俺と相手の間に立った形だ。  すると女子高生が「この男、こんな綺麗な彼女がいるのに、私の・・」と言いかけ、口をつぐんだ。  女子高生の目がカッと見開かれている。見開かれたまま閉じない。その目は三千子の方を向いている。三千子が睨みつけたのだろうか?  目もそうだが、体も動かない。まるで蛇に睨まれた蛙のような状態だ。
/1272ページ

最初のコメントを投稿しよう!