732人が本棚に入れています
本棚に追加
霊の存在・・俺はこの年になるまで信じてこなかったが、
本当にそんなものがあるのなら、俺には会いたい人がいる。
ずっと昔、亡くなった俺の姉だ。
「こうちゃんには、ずっとそばにいてくれる素敵な人が現れるわ」
姉は何度かそう言った。まるで何かを予言するように言っていた。
俺は未来に現れる人より、そんな不確かな人より、心優しい姉さんに生きていて欲しい。ずっと傍にいて欲しい。そう願っていた。
だが、祈りも虚しく、心臓の悪かった姉は早逝した。
こんな場所で急に姉のことを懐かしく思い出してしまったが、ここに姉の霊魂がいるとは思えない。この洞窟は、姉にとっては無縁の場所だ。
いるとしたら、それは、三千子の霊だ。
俺の歩みが遅くなった。この先に進むことに気が引けたのだ。
さっき見たような霊魂が、他にも現れたらたまったものじゃない。学生の時は、あれを見ることができなかったのか? それとも俺に霊魂が見える力が備わったということなのか。
最初のコメントを投稿しよう!