行動

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 白井さんは、 「そうですね。私も気分転換をしたいと思っていたところです」と課長の提案に同意した。  そう言った後、白井さんは俺を見て、 「中谷係長」と呼びかけた。俺が「え?」と返すと、  白井さんは会議室の窓を指し、 「この窓から、あのパワーショベル、よく見えますね」と言った。  白井さんの意図することがわからない俺は「そうだな。よく見える」と返した。  白井さんは、言い終えると、 結っている髪を振り解いた。想像よりも長い髪がふわりと広がった。 「おお、白井くん。女は髪が変わると、随分とイメージが変わるもんだな」  課長は感激するように言った。更にセクハラ的欲望が高まったような顔に見える。 そんな課長に白井さんは、 「課長、あのパワーショベル、私、乗ってみたいのですけど」 「え? 白井くんが?」課長はきょとんとした顔を見せ、「乗るって?」と言うと、 「私、自分で運転してみたいです」  白井さんはそう言った。 「君は免許を持っているのかね」と課長は訝しげに尋ねた。 「ええ、大型の特殊免許なら、持っていますよ」 白井さんはそう答えた。  わが社の特質上、免許を持っていても不思議ではない。だが、入社してそれほど時間の経っていない彼女が免許を持っているというのは少々驚きだ。 「だが、あのショベル、調子が悪いらしいぞ」 課長は残念そうに言った。 「それも、乗って、ショベルを動かせば、悪い箇所が分かるかもしれません」  そう言った白井さんに課長は「君ねえ、いくらなんでも、そう言われたからと言って私も、はい、そうですか、と許可は出せないよ」と渋った。もはやセクハラどころではない。  すると、白井さんは続けて、 「私、前に一度、別の工場で、重機の悪い部分を発見したことがあるんですよ」と言った。  課長は「うーん」と考え、「へえ、それは頼もしいな」と考えを変えるように言った。 「工場長に言ってみるよ」  花田課長はそう言った。白井さんのお願いだ。聞いてやらないわけにはいかない。見返りを期待しているのか、花田課長は張り切って言った。
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