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『例の件、進展があったらしい』
忘れたくても忘れられない。陽斗の母にお願いしてあった件だとすぐにわかった。
『拓真と倶楽部で落ち合う。用が済んだらすぐに帰るよ』
「くれぐれも気をつけてね」
倶楽部には大勢の人が集まる。何も心配はいらないはずなのに、この前の様な事があると不安になって。
「早く帰って来て、翔」
『大丈夫だよ、待ってて。行ってくる』
翔の声は明るい。拓真も一緒なら、きっと大丈夫。なのに何故、こんなにも胸がざわつき立つの。
翔の帰りを部屋で待つ。考え過ぎかもしれない。自分に何度も言い聞かせる。
「どうして……?」
不安が高鳴り翔に連絡を入れる。携帯は不在着信になり応答しない。
逢いたい―― 今すぐに、翔に逢いたい。
何がこれほど私を急き立てるんだろう。熱を帯びてやまない想いに幾度も惑わされる。
『届くまで叫ぶよ―― 君を愛してる』
不意にイベント会場で聴いた歌が耳に響く。
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