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「あぁ、汚れちゃったね」
紙袋とはみ出したヴェールを拾い上げて、しゃがみ込む私に手を差し出す。
「立てる?」
「あ、ありがとうございました」
立たせてもらってから、ヒールが片方折れてしまっている事に気が付く。
また私はよろけて。桐谷と呼ばれた男性に片腕を支えられた。
あれ―― 桐谷って。つい最近、何処かで聞いたような。
「え、桐谷社長!?」
大口の顧客情報に名前を見たところだった。陽斗が契約を取り付けたらしく、急成長中で、社長はまだ若いと会社パンフを見せられたばかり。
「そうだけど、俺を知ってるの?」
「もちろんです。私の社も御世話になっていて」
だったら信用してもらえるかな、彼はそう言うと目の前にあるカフェバーに私を誘う。
「すぐに直させるから」
ミュールを直す間、そこに居るように言われて。
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