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二人でカフェバーに入る。店内はステンドガラスが散りばめられたアンティークな内装で、ライトダウンした落ち着いた雰囲気。
彼は携帯を掛け出して。すぐに明るめのスーツ姿の若い男性が店内に入ってきた。
「郁也、至急で」
茶髪。細見だけどバランスがとれた長身。可愛らしい顔立ちをした郁也と呼ばれた彼が、私のミュールを持ってまた店を出て行く。
波木 郁也―― 倶楽部キャストだよと教えてもらう。
「ご迷惑をおかけして」
自社取引先の社長に迷惑をかけてる。居心地悪い気分でいたら、淡い色をしたカクテルが運ばれてきた。
「そんな表情してないで。ゆっくりして」
「あ、ありがとう」
緊張感が凄い。大口の取引先相手。しかも――
「どうかした、まだ怖い?」
会社パンフに掲載されていた写真より、ずっと素敵で優しそう――
緊張と恥ずかしさが入り混じる。こんな素敵な人に助けてもらえたんだ。
桐谷 翔―― 彼との出逢いはここから始まった。
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