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え――? 目に飛び込んだ光景に扉を開く手が途中で止まる。
「拓真さん……?」
ソファに横に眠る翔を拓真が間近で見下ろしてる。片手が翔の前髪にふれて、じっと顔を覗き込む。
愛しい者を愛でるかのような優しい瞳で。
「あぁ、朱莉さん」
私に気が付いて、拓真の顔がこちらを向く。やっぱり翔は寝てしまっているのか身動きをしない。
「疲れているのに呑み過ぎですね」
言いながら上質のスーツの上着を脱ぎ出して、それを寝ている翔にかけてる。
「起きないかな、しばらくは」
ルームライトの灯りを落とすと、ゆっくりと私がいるリビングの入口へと歩いて来る。
「どうかされましたか、朱莉さん」
ねぇ、拓真さん。貴方は今、翔をどんなふうに見つめていたの。
「……彼が起きるまで、隣の客室にいましょうか」
答えられなかった私を見て、拓真は軽く肩で息をついていた。
ゲストルームはとても広くて、ゆったりとした応接セットが置かれてる。扉は閉めずに拓真の後に続いた。
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