倒錯的

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「わかってはいた事だが、婚約と聞いて」 己の中にある想いに整理がつかなくなったと告白する。 「なるべく翔とは顔を合わせない様にしていたんだが……」 「拓真さんには、本当にそばにいて欲しいと翔は思ってるはずです」 どうしたらいいの。拓真の想いを知ってしまって、私には何ができるの。  それでも翔は譲れない。何年もそばにいたのが拓真さんでも。私も翔が大好きだから。 「心配しなくても。彼は貴方しか見ていない」 私を見つめているのに、どこか遠くを見ている気がしてた。拓真は私を通して翔を見ていたんだ。 「拓真さん、だから会社を引き継いだの?」 「俺ができる事は…… それぐらいでしたから」 私達を引き離そうとした事もあるけれど。翔の為に裏の部分を引き受けた拓真を責められない。 「ごめんなさい。私、気が付いていなくて」 「貴方が謝るようなことじゃ……」 言いかけた拓真が、ふっと私を見て目を細める。 「朱莉さん、ひとつだけわがままを聞いて下さい」 「え……? あ、あの、拓真さん!?」 私の前に拓真が跪く。片手がすっと上がり膝においた手の平を握りしめる。
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