義侠心

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「なんだ、どうした?」 「失礼を承知で。桐谷さん、あの連中とは縁切れしたんですよね?」 真っ直ぐな視線が俺を射抜く。彼には嘘をつけない、そんなふうに思った。 「俺自身は縁が切れたよ。ただ、まだ切れていない仲間がいる」 拓真は説得に応じず、まだ金融会社から手を引いていない。裏と繋がりがある拓真を、俺はやはり手元に連れ戻したい。 「直談談判に出向いたばかりだ。拓真をやめさせる為に」  それを縁が切れたと言い切れるのだろうか。彼には正直に事情を打ち明けてかまわない気がした。 「そうですか。……実は」 倶楽部の入口付近に、なにやら数人が立ち尽くしていたという。黒ずくめのスーツ姿の男性に朱莉は脅かされた事がある。陽斗は彼等を目にして嫌な気配を感じたらしい。 「拓真の関連か―― わかった、注意しておくよ」 「朱莉を一人にはしないで下さい。桐谷さん、彼女を本当に頼みます」 陽斗はそれだけを伝えると、俺に背を向けて朱莉の方へ歩き出す。
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