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走り出した先に見つけた。拓真を取り囲む様に数人の男性がそこにいる。拓真の背後は建物に挟まれた路地の突き当り。
「拓真……!」
彼等の後ろから高い声を張り上げる。俺の声に、彼等が振り返る。嫌な目付きだ。陽斗が目にした者達はおそらく彼等だろう。
「桐谷さん、貴方でしたか」
「川名、またお前か。拓真になんの用だ」
数人いる男性の中に川名が混ざっている。以前、朱莉にしつこく付き纏い、川名には資金を用立てた経緯がある。
「佐原さんが首を縦に振らないんでね、ちょっとお願いしてただけですよ」
またか―― 彼等はきりがなく援助を求めてくる。だがそれはあまりにも理不尽な要求と変わらない。
「拓真、お前は退がってろ」
「だめだ、翔。これは俺の……」
「いいから退がってろ」
拓真と川名の間に入り込む。前に出ようとする拓真を後ろ手に制した。
「お前達とは話しがついてるはずだ」
「こちらも色々と事情が変わりますんでね」
俺には用が無い。川名が一歩、拓真へと近付く。
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