2303人が本棚に入れています
本棚に追加
「拓真、お前は倶楽部に戻ってろ」
「桐谷さん、佐原さんと話をさせて下さいよ」
にたにたと薄気味悪い。言葉の丁寧さを台無しに変えるような笑いに苛立ちが募る。
背後に隠した拓真を振り返り、その腕を掴んだ。
「頼むから言われた通りにしてくれ。これは元々、俺の問題だ」
キッと拓真を睨みつける。彼はようやく、わかったと頷く。だが、路地を出て行こうとした拓真の前に川名の背後にいた連中が立ちはだかった。
「いい加減、納めて下さいよ。こっちがとばっちりを喰らうんだ」
その中の1人の台詞に妙な違和感を感じた。
「拓真、お前まさか……」
「あぁ、そうだ。翔に恥じる真似はしていない」
一瞬で理解がついた。川名は援助を求めているのでは無く、裏の元締に繋がる資金を納めろと要求している。つまりは本来法的に何も権限の無い金の取り立て。
問題を起こさずに穏便に済ませてきた。今までは彼等に逆らう事を避けてきた。そんな繋がりを断ち切る為に、拓真に金融会社を譲った。
「拓真、それがお前の意思だな」
「俺はお前と肩を並べて行きたいんだ」
陽のあたる場所で。以前の様に互いに将来の話をしながら。離れていた拓真の思いが俺と同じところにあると知った。
最初のコメントを投稿しよう!