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それならなおさら、拓真を放ってはおけない。
「早く行け、お前との話しは後だ」
躊躇う拓真の背を押す。だが、行く手を阻んでいた彼等の中の1人が、上着の中に手を差し込む様子が見えて予感が走る。
「あんた、いったい何を――!」
きらりと刃物の先端が目に飛び込む。拓真に向けられた刃先に思わず身体が飛び出す。
刺される――! 拓真を咄嗟に伸ばした腕で強く押す。よろけた拓真が俺を振り返る。
「え、江崎さん……!?」
拓真は俺を通り越して、さらに俺の後ろを見つめて驚愕の声を上げた。
「あんた達は何をしてるんだ」
「いてぇ、離せっ……!」
黒ずくめの男性の1人の腕を陽斗が捻りあげている。危うく男が持つ刃物に俺が刺されるところだった。
「江崎さん、無茶をするな。離れるんだ!」
彼までの距離はほんの僅か。こんな事に彼を巻き込むわけにはいかない。
「あんたが首を縦に振れば済む、簡単な話しだ」
「断る。今後一切、要求には応じない」
男の顔が歪む。陽斗に腕を取られて物凄い形相に変わり、刃先は再び上を向く。
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