義侠心

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【side_陽斗】  意識が遠のく。ゆらりと揺れる身体に力が入らない。脇腹が酷く痛む。 「着いたぞ、病院だ」  翔に抱き抱えられる様にして歩いた。拓真が先に手配に動き、到着してすぐに処置室へ案内された。手当が済むと、かなりの広さがある個室に運ばれていた。 「すまなかった」 薄れ行く意識の中で翔の声を聞いていた。次に目が覚めた時は、彼等の姿は病室には無く、枕元には朱莉が俺を見つめて泣いていた。  赤いドレスに肩からコートを羽織る。綺麗にアップされていたはずの髪はほつれ、後れ毛が乱れて頬にかかる。こんな時に思うのもどうかしてる。やっぱり君は綺麗だよ。 「……泣くなよ、朱莉」 「陽斗、気が付いたのっ!」 病室には不似合いな高級ベッドの上に身体を起こす。ズキリと身体の半分に苦痛を感じる。ぐるぐるに包帯が巻かれているらしく、身動きがしづらい。 「どうしてあんな無茶をしたの」 ぽろぽろと涙を零す。膝にのせた俺の手の平を朱莉が握り締めて何度も泣かれた。 「朱莉、とにかく落ち着いて」 指先を握り返す。声を出すと僅かに息が上がる。脇腹を刺されたせいかもしれない。
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