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「見過ごせなかった、それだけだよ」
朱莉を祝う為に倶楽部にいたあの時、出て行く翔を追い掛けて朱莉が会場を抜けた。俺は朱莉を追って外へ出て、翔に帰された朱莉と郁也を見ていた。
不安そうに歩く朱莉を見て、何も迷いはなかった。俺は翔の後を追い掛けていた。彼女を哀しませる結果を望まない。
「翔を庇って、陽斗が怪我をするなんて」
やっと婚約パーティーまで開けるところまできたんだ。ようやく手にした君の幸せは、翔を失っては叶わなくなる。
「護身用の小型ナイフだろ。浅い傷ですんだと医者に言われたよ」
数日あれば退院できる。だからもう、そんなに泣かないで。
枕元で幾度も謝る彼女に笑いかける。なにより君が無事でいてくれた事の方に安堵を覚える。
閉じていた病室の扉が開き、亜紀が強張った顔をして入って来た。
「心配したのよ。倶楽部からいなくなったきり、戻らないんだもの」
「他の皆は?」
詳しい事情は伝えていない、亜紀は社の同僚達には上手く話を誤魔化してあると伝えてくれた。
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