義侠心

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「全てが片付く。今度こそ本当の意味で」 母の人脈に警察関係者がいる。それも役職の高い人間ばかりが揃う。ただ裏との繋がりを拒むだけでは今と同じ状況を繰り返す。母の助けを借りて、裏側には警察の摘発が入る。 「そうなれば、二度と俺達には関わらなくなる」 自分達の保身が優先される。たった一ヶ所の資金源に組織は固執しなくなると、翔は説明を続けた。 「陽斗のお母様が…… そう……」 朱莉は申し訳ない思いがあるのか、唇を噛み締めて何度も呟く。  また泣きそうな顔を見ていると心が乱される。抱きしめるわけにはいかない、君はもう、彼の婚約者なのだから。 「桐谷さん。これ以上何かあれば、俺は」 貴方から朱莉を奪う。じっと翔を見上げ、彼の決意を確かめようとした。 「Noiseはもう、終わりだ。君に約束する」 翔は真っ直ぐに俺を見返している。彼を取り囲む全ての雑音を取り除く、強い意志がそこに見える。 「少し休みます、1人にして下さい」 本当のさよならだ―― 朱莉。ゆっくりと目を閉じた時、彼女の震えた声が耳に届く。 「私…… 此処に残ります」
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