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「朱莉、行こう。江崎さんもこう言ってる」
ベッドの脇から動かない朱莉に、背後から翔が肩に手を掛ける。
「行けない、此処にいます」
小さく何度も首を振り続ける。まいったな、意外に頑固な姿勢にだんだんと可笑しさが込み上げてくる。
「ばかだな、本当に」
え? くすくすと笑い出した俺を驚いた目で朱莉が見つめている。
「目を閉じて」
傍らにしゃがみ込む彼女の頭をそっと撫でる。
「え…… 陽斗?」
「早く、目を閉じて」
まぶたを閉じた君を愛おしく眺めた。この頬にふれて口づけができたらどれほどよかっただろう。
「もし、怪我をしていたのが桐谷さんなら、君はどうした?」
「……駆けつけたわ」
「ちゃんと、そこに答えがあるよね?」
朱莉は目を開けて俺を見て頷く。もう一度だけ、ゆっくりと彼女の頭を撫でた。
「桐谷さんと幸せになりなよ」
君にとってのNoiseも、どうか全てが消え去るといい。
「だけど、陽斗」
まだ躊躇うの。朱莉の後ろに立つ翔に視線を投げる。
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