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最終章・不変愛
【side_朱莉】
翔がずっと黙ってる。車を運転している間も、彼の自宅の洋館に着いてからも。
暖かで広いリビングルームで二人きりなのに、翔が頬杖をついて足を組んだ姿勢のまま動かないから、きっと怒らせたのだと思ってた。
陽斗の元に残りたい。私がそう言い張ったから、きっと翔は呆れてる。
「私、着替えて来るわ」
「朱莉、ちょっと待って」
やっと私の方を見てくれた。コートを片手に立ち止まり、ソファから立ち上がる翔を待つ。彼は目の前まで来て私の腰に両腕を絡める。
抱き寄せられて翔を見上げた。さらさらした髪が目元を隠してる。
「やっぱり、怒ってるの……?」
「怒ってないよ、どうして?」
だって―― とても哀しそうな表情をしているもの。
「貴方が…… なんだか泣きそうだから」
翔の胸を押し返す。じっと顔を覗き込むと、翔は困った様に微笑みを返した。
「また君がいなくなるんじゃないか、そう思った」
「あ、ごめんなさい、私……!」
傷つけてたんだ。私を責めることもできずにただ黙って。それを受け入れてた。
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