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一人でシティホテルを出てから、一度自宅マンションに帰る。昨夜と同じ服で出勤するわけにはいかない。急いで支度を整えて、またすぐに会社に向かう。
昨夜――
陽斗と夕食を一緒にしたあと、羽衣のデザインを思い浮かべながら、一人で生地屋を巡って数件見て歩いた。
自社にある生地カタログにも実際の生地サンプルが付いてるけど、店舗で売られている生地を直に触れるとイメージが湧いてくる。
『間もなく閉店になります』
何軒めかの複合型ショッピングモールで流れたアナウンスで出入り口へと向かった時。芸能事務所から預かった大切なヴェールが無いことに気が付く。
「さっきのお店!」
生地にばかり気をとられて、うっかり置いて来てしまったんだ。
走って戻ったらヴェールが見当たらない。店員さんに尋ねると、若い男性がそれらしき紙袋を手にしていたという。
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