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その中学生の男の子は今日、3ヶ月付き合った彼女と別れた。
初めて付き合った大好きな女の子だったけれど、うまくいかなかったのだ。
どうしてこうなってしまったのかと、男の子は悔やみながら家に帰った。
その途中で男の子は、不思議な女の子に出会った。
「その出会い、やり直させてあげますよ?」と女の子は言った。
その女の子は出会いの神様で、時間を巻き戻して彼女との出会いからやり直させてあげるという。しかも出会い方の状況や設定も変更が可能だとか。
「出会い方が少し違うだけで、結果が変わる可能性は充分にあります。どうです、お試しになってみては?」
男の子はうなずき、頼んだ。
「お願いします。彼女との出会いからやり直させてください」
男の子は過去に戻り、彼女と出会い直した。再び恋人同士になって、青春を謳歌した。しかし結果は同じだった。付き合っていた期間は違うけれど、ふたりは別れることになった。
男の子は同じように悔やみながら家に帰った。
その途中、再び出会いの神様が現れ、彼に言う。
「どうしますか、もう一度やり直しますか?」
男の子はうなずき、頼んだ。
「お願いします、もう一度」
男の子はどうしても彼女と一緒にいたかった。
それほど彼女のことが好きだった。
男の子は過去に戻り、彼女と出会い直した。しかし今回もダメだった。男の子は彼女と別れることになった。
そしてその帰り道、同じように出会いの神様に会い、同じように過去に戻してもらう。
同じ事が何度も続いた。
付き合っていた彼女と別れ、その帰り道に出会いの神様に会い、時間を戻してもらって、彼女と出会い直す。
しかしどんなふうに出会っても、彼女とは長く続かなかった。
「どうしますか、もう一度やり直しますか?」
もう何度目になるだろう。出会いの神様は男の子に訊ねた。
「ああ、頼む。ぼくは出会い直したい」と男の子は言った。
「では、彼女との出会いを」
「いや、そうじゃない。ぼくが出会い直したいのは……」
男の子の言葉を聞いて、出会いの神様はうなずいた。
「わかりました。ではその出会い、やり直します」
再び時間が戻った。
その中学生の男の子は今日、3ヶ月付き合った彼女と別れた。
初めて付き合った大好きな女の子だったけれど、うまくいかなかったのだ。
どうしてこうなってしまったのかと、男の子は悔やみながら家に帰った。
その途中で男の子は、不思議な女の子に出会った。
「ハンカチ、落としましたよ」とその女の子は言った。
「ああ、すみません。ありがとうございます」ハンカチを受け取って礼を言うと、男の子はその子と別れた。
そのあとで男の子はふと思った。いったいいつ、どうやってハンカチを落としたんだろう。しかし別れた彼女のことで頭がいっぱいだった彼は、その疑問をすぐに忘れてしまった。
出会いの神様は男の子の背中を見送りながら、あのとき彼が言ったことを思い出していた。
「いや、そうじゃない。ぼくが出会い直したいのは……、あなたです。何度やっても彼女とはうまくいかない。それでもあなたに会うたびに『もしかしたら』と思ってしまう。その可能性にぼくはもう疲れました。だから今度はあなたと出会っても、そのまま何もせずすれ違うように出会い直させてください」
男の子の背中を見送っていた出会いの神様は、微笑んだかと思うと次の瞬間には姿を消した。
最初で最後の道を、男の子は歩み始めた。
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