ほらね。

1/1
66人が本棚に入れています
本棚に追加
/58ページ

ほらね。

 オレは1時間と経たずに、若頭・東雲修哉の前に連れ戻された。  仕方ねぇじゃん。  だってやっぱり迷子になったんだもん。  なんだ、この無駄に広い屋敷は。ここって玄関の横じゃねぇじゃん。誰だよ、玄関の横って言ったやつ。オレか。使えねぇな。  だいたい、土地がねぇっつってみんな狭いとこにすんでんじゃねぇの?  オレだって、ワンルームですが。  あ、オレはいいのか。一人暮らしだったわ。  くっくっく と笑う東雲修哉。  あ、ヤバい。ムカつく。 「おかえり、颯介」と口の端をモゾモゾさせながら、カップを持ち上げる。・・・肩震えてんだけど! 「笑いたきゃ笑えばいいだろ!」  くっそー。怒鳴った途端腹抱えて笑ってんじゃねえぞ!ガッテム!  ・・・どういう意味か知らんけども!  浮きかけた腰を下ろし、さっきは気づかなかった座り心地のいいソファーに深く腰掛ける。  ズブズブと沈む感じが高級感満載で、どうせなら身体の細部まで味わってやろうとソファーに寝転がる。 「その態度で、よく史上最強を唄えるものだ」と呆れ顔の東雲修哉。  東雲・・・東雲修哉・・・ 「あ、そっか。修哉でいいのか」  年上だろうが、こんな失礼なイケメン敬う必要・・・あるか?年知らないけどさ。 「修哉さんか?修哉様?修哉殿」 「か、梶本さん・・・」あ、天使が真っ青。  オロオロと両手を上げたり下げたりとなんか忙しそうだね、天使。  知らないけどね。だって迷子の原因だし。  あんな風に屋敷ん中グルグル回ってさ、最後に「ほら見た事か」って言いたかったんだろうけど。  ・・・いや、言われてけど。そうじゃなく。 「会って二日、2回目。正味2時間でどんな相手かも確認せんでサクッと手を出すような男、たとえヤクザだろうが知ったことか」  ザワザワとザワつく周りに・・・っていつの間にっ  10人はいるですけど。怖い人が。  なんで怖い人が怖い顔してんの?  あ、オレかなり失礼なこと言ったわ。
/58ページ

最初のコメントを投稿しよう!