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天使は天使(意義は認めない)
多分、逃げてる最中に落としたんだろうな、とため息が出る。
踏んだり蹴ったりの金曜日。
財布はスーツの内ポケットに入っていた。
カード類も無事。スマホもポケットに入ったままで無事。
問題はカバンに入ってるオレの名刺と、週明け予定されてる会議の資料。
社外秘ではないが、率先して他人に見せるものでもない。
お巡りさんには、財布の中に運良く入ってた免許証で身元確認をしてもらい、被害届云々については「もちろん出します」と言い切り、そのための書類なんかに署名していた時「若」と、さっきのスレンダーイケメンが・・・「オレのカバン!」
「見つけてくれたんですね、ありがとうございます」
もう、何このイケメン。
天使に見えるわ。天使。
「いえ、それほど遠くに落ちていた訳では無いので」
なんだろう。あのクソぼんぼんにされた仕打ちがするんて消えた。
人間、ひどい状況でちょっと優しくされると、泣きたくなるよね。
俺は泣かないけど。大人だから。
「・・・で、貴方の身分証は?」とお巡りさんに助けてくれた若って人。
お茶をどうぞ、とイケメン天使にペットボトルをもらい、ありがとうって返事をする。
「・・・・・・。・・・一帯をまとめています、柴山組で若頭をさせていただいてます」
若頭の言葉に思わず隣に座る男を上から下まで見てしまう。
え?ヤクザ?
「どうしましたか?」
聞く天使に「ヤクザって初めて見たんで」とつい「なんか・・・インテリっぽいのに」と口が滑る。
天使が笑う。ついでに若?も笑う。
お巡りさんは呆れてる。
「いいですか?あなたは一般市民なのだから、反社会勢力とは相容れないのですよ。今回はたすけてもらったとお思いでしょうが、これきり関わることのないように」
と、厳しく言われた。
ごもっとも。
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