とりあえずオレは悪くない(と思う)

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とりあえずオレは悪くない(と思う)

 出社したオレを待ってたのは山本で、ごめんと何度も謝られた。  別に山本が悪いわけじゃないから、謝られても困るんだけど。  オレはオレの出来ることをしていた。  どの道、部所異動があってまだ数週間で、個人の持ち物なんてあまりないけど。  引き継ぎの文書の作成と、オレの私物を袋に入れるのと。山本の大騒ぎのせいで部所内のみんなにはもうバレてるので、隠す必要もなくバタバタと準備を進める。  何もわかってない部長だけが、オタオタとしていた。  へっお前もあのクソぼんぼんと同類だわ!と鼻で笑って気づかないフリをする。  始業時間の1時間遅れでやってきたクソぼんぼんは、オレを見るなり目を輝かせ「生きてたんだ」と宣った。 「なっ」  ガタンっと音を立てて立ち上がる山本を制し、にっこり微笑んでゆっくりそいつの前に立ち、思いっきり殴ってやった。 「い、いたいっ何するんだ!パパに言いつけてやるからな!!!」  と喚くクソに「オレの進退をてめぇが決めんじゃねぇよ」と蹴りを入れとく。  っつーか、30才目前にして「パパ」って。  笑いをこらえるの大変なんですけど?  直属の上司である部長に「退職願」を渡し「お世話になりました」と、頭を下げる。  そして今回の件について説明したあと、被害届を出している事、その時に会社名と「あのクソの名前も出したんで」と捨て台詞を吐いて、退社した。  部所を出る時「うおおおお!」だの「よくやった」だのと聞こえたので、とりあえず振り向いてVサインをしておいた。  ちょっと英雄になった気分だった。
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