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各々、プレイ後の会話を楽しんでおり、互いの近況を報告しあっていた。
藪中と瀬尾以外は皆ベータで、高校時代、同じバスケ部だったメンバー達だ。元部員、全員揃う事は滅多にないが、今日のように、息抜きとして定期的に集えるメンバーで試合をしていた。招集をかけるのは元キャプテンである、この瀬尾だ。
「……あれ? 彼女を見たのは久し振りだな」
ここで藪中が一人の女性に気付いた。メンバーに混じって会話を楽しむその女性には見覚えがあった。マネージャーを務めていた小早川由梨だった。
彼女は黒髪ストレートの髪に、お淑やかなデザインの紺色のワンピースを着用していた。相変わらずの美女だと、藪中は彼女の立ち姿を見つめた。
そんな小早川であるが、実はオメガなのだ。彼女を溺愛する父はアルファで、ベンチャー企業の代表取締役を務めている。強引な手法ながらも、やり手としても有名で、業績もいい。
オメガである彼女が、藪中が通っていた名門私立高校に入学出来たのも、父親の影響が大きいと聞いていた。
当時、オメガの学生は少なく、彼女のように親をアルファに持つ者が殆どだった。ようは権力を使っての裏口入学だ。
そんなオメガ達の中で、小早川は一番目立っていた。マドンナ的な位置付けでアルファだけでなくベータにも人気があった。彼女も自分の立場と性を利用して、数多くのアルファの学生と肉体関係を持っていた。
ついた渾名は「アルファ喰いの淫乱オメガ」だ。そういった事もあってか、藪中自身、小早川に対して、あまりいい印象は持っていなかった。寧ろ、避けてきたくらいだ。
「ああ、小早川な。今来たのかな? おー今もビッチ臭がすげーな。多分、ヤブが久々に来るって聞いて来たんだろ」
「どうして俺?」
何とも失礼な発言だと思いながら、すかさず返した。
すると瀬尾は呆れた様子で言った。
「……お前、わかってて聞いてるだろ? 小早川の本命はヤブだったって噂……知ってただろ?」
「え? ああ、なんか聞いた事もあったような……」
そんな昔の噂話、とうに忘れたと適当に受け流した。
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