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 殺せ、ころせ、遠くで声が聞こえる。一人やふたりではない。もっと大勢の怒号。彼は地面に這いつくばってその嵐に晒されていた。胸がむかついてきて、口を大きく開けて吐いた。血がかたまりとなって地面にこぼれ落ちた。何だよ、この血。急に氷水の中に落ちたような極端な寒さに襲われる。地面はごつごつと尖り、しかもぬかるんでいた。硬い上に柔らかく、どちらも不快な感触だった。何故こんな所にうつ伏せに寝ているのかが全然思い出せない。気持ち悪い、そして、寒い、ものすごく寒い。また気持ち悪くなって口を押さえようと手を出した、しかし、その手はいつもと違っていた。  絶叫して、彼は跳ね起きた。
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