四通目の手紙

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四通目の手紙

 ダーリン、帰ってきてくれてありがとう。テレビのニュースであなたが死亡したって報道があったから、私、あなたが死んだものだって思ってました。だからあなたが帰ってきた時びっくりして、思わず幽霊かと思ってしまいました。でも嬉しかったです。私を忘れずにこうして帰ってきてくれたんだから。  遺書に書けなかった事をここに書きます。 私はあなたのために生きている。 あなたのベイビーもうすぐ生まれるわ!私はその時生きていないけどベイビーの事は心配しないでください。ベイビーのことはパパとママもあなたに協力するって約束してくれたから。あなたの事はパパも認めてくれた。だからあなたもパパを許してあげてね。パパはいい人だから……もう毛だらけで全身真っ黒だからってあなたを差別したりしないから……。だからお願いです。パパを許してあげて下さい。そして仲良く一緒にベイビーを育ててください。ベイビーは私の生まれ変わりなんですから。出来ればあなたと正式に結婚したかったけど私にはそんな時間はないのです。  ダーリン、こんなことになってゴメンなさい。帰ってきた途端にこんな話を聞くなんて思わなかったでしょう。自分が不治の病で余命二ヶ月だって話したときにあなたは私のために泣いてくれましたね。そして私を思いっきり抱きしめてくれましたね。私もあなたの不器用な優しさに涙しました。だけどあなたには長い人生がある。もしかしたら私のいなくなった未来で誰か他の人を愛するかもしれないし、その人と結婚することだってあるかもしれない。私はそれを止めはしません。それにあなたのこれからの長い人生を束縛する権利など私にはないのです。だけどあなたには覚えていてもらいたい。あなたをこんなにも愛した一人の人間が存在していたということを。  あなたと暮した日々は、私にとって人生最高の時でした。あなたのつぶらな瞳、忘れません。あなたの素敵な笑顔、忘れません。あなたの毛だらけの逞しい体、忘れません。あなたのサバンナを思わせる真っ黒な肌、忘れません。すべて私には貴重な宝物です。 私はベイビーを産むために死にます。あなたと短い間ですが一生に人生をともにした女性はあなたを一生、文字通り一生誰よりも愛していました。ここで最後のお別れの挨拶をしておきます。  人を愛することを教えてくれてほんとうにありがとう。あなたは私にとってすべてです。さよなら。
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