四通の手紙

一通目の手紙

　ダーリンへ

　お元気ですか？あなたが突然いなくなってから10日が過ぎました。今何処にいますか？毎日三食食べていますか？それが心配で食事も喉を通りません。あなたがいないことがこんなにも辛いなんて……。

　お腹の赤ちゃんは順調に育っています。相変わらず父は堕ろせ！堕ろせ！そんな毛だらけの野獣の子供を産んだら俺たち家族は日本にすめなくなる！なんてバカな事を言って、私に中絶を迫るのです。全く自分の事しか考えないエゴイストの人種差別主義者です。でも安心してください。私は父の脅迫に負けません。一人でも、絶対にあなたの赤ちゃんを産んでみせます。

　あなたがいなくなってから、私は家族というものについて考えました。私の父は仕事第一の人間で、私達家族のことなど、どうでもいい人でした。全く自分の事 しか考えていなかったのです。だからあなたをいぢめたのだと思います。

　いろいろあなたに酷いことを言いましたね。こんなのが人間なわけないだろう。これは動物以下だ。なんて酷いのでしょう。こんな父を持って本当に恥ずかしいです。もしかしてあなたは父の暴言に耐えられなくなって、家出をしたのではないですか？

　だけど、だけど私はあえてあなたに言います。あなたのしていることは父と一緒です。守るべき家族を捨てて逃げるなんて、一番あってはならないことなのです。あなた、もう 少し父親としての自覚をもって下さい。もう少しであなたも父親になるのです。父親として家族を支えなければいけないのです。

　こんな事を書いところで、あなたは日本語が読めないし、スマホの使い方だって分からないと思うけど、書かなければ自分の気持が収まらなかったので書きました。

　あなたの帰りをいつまでも待っています。

　あなたの妻より　愛しのダーリンへ