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「同窓会、何時からだっけ?」
「18時。プラザホテルであるんだけど、送ってくれる?」
「じゃあ、17時頃に出たら十分間に合うね。帰りは?」
「終電には間に合うだろうから平気。最悪タクシー使うよ」
「あら、セレブー」
茶化してくる母に笑い返していると、バッグの中でケータイが震えた。
見てみると、会社の後輩からのラインだ。
「あら、彼氏?」
「だといいんだけど……仕事の連絡」
「忙しいの?休みの日まで連絡がくるなんて」
「ううん。私はそうでもない。けど最近入ってきた後輩がね。努力家で」
返信を打ちつつ、私はその後輩の顔を思い出す。
『春香先輩』
毎朝、笑顔で声をかけてきてくれるその男の子はここ最近の私の癒しの存在だ。
入社したてと言うこともあって、とてもフレッシュ。
おろしたてのスーツはピカピカ、時々ネクタイがずれてしまっていたりするところもあって、そんな時は可愛いと思う。
返事がよくて、失敗することはあるものの前向きな性格のようで拗ねたりひねくれたりする様子もない。
みんなからとても好かれている子だ。
子、と言っても、年はもう23歳で十分大人なんだけど。
なんていうか笑い方とか話し方とか、年の割には素直すぎてついそんな風に思ってしまう。
今日のラインも健気なもので、連休明けに先輩に見てもらう資料を事前に見てほしいというもの。
確かに、彼の教育についているのは部内でも一番のくせ者だ。一度も誰かに内容を確認しておいてもらいたいという気持ちは、とてもよく分かる。
私で良ければ、という内容を打って返すとすぐに既読になり、可愛らしい犬のスタンプが送られてきた。ありがとうございます、という丸い文字が点滅している。
どういたしまして、と送って、少し迷ってからスタンプ一覧を表示させた私は、そこでも少し迷ってから、リボンがトレードマークの猫のスタンプを送っておく。
「あんた、今日の同窓会で落ち込むわよー?出席やめとけば?」
にやにや笑いながら言う母は心底楽しそうだ。
「余計なお世話です」
落ち込むことなんて、もうとっくに慣れてるよ、と心のなかで加えて。
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