***epsode 1***

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聞いて、だけどきっと矢部くんは今でもいろんな人と繋がっているだろう。その人たちのところへ行ってしまうかもしれないのは、今の私にとってとても心細い。 それに万が一、矢部くんも今の私みたいな気持ちだったとしたらそれはそれで聞くべきじゃないような気もした。 「ーーーあの、」 逡巡した結果、他の話題を絞り出そうとしたちょうどその時。 「では、時間になりましたのでそろそろ乾杯に移りたいと思います。皆さん、各クラスのテーブルについてください」 今日の司会を担っているらしい幹事の同級生の声が響いた。 「お。やっと始まるか」 矢部くんは預けていた背中を伸ばすと、こちらを振り向いて「何ぼんやりしてんだよ」ときょとんとする。 「行こうぜ」 そうして当たり前みたいに、私を促した。 うわぁ……。 矢野くんがモテていた理由が今になって、改めてよく分かったような気がした。
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