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***epsode 2***
「けど、世間て狭いなぁ。結局このテーブルは全員東京か」
そう言って、佐野くんはメインのお肉をパクリと頬張る。
「まぁここじゃなかなか就職も難しいしねー。東京、千葉、埼玉あたりに出てる人はやっぱ多いんじゃない?」
原さんはウェイターさんに空になったグラスを渡しながら言った。
「しかも全員揃って独身とはなぁ」
笑いながら言ったのは矢部くんで、独身貴族に乾杯だな、とカクテルのグラスを軽く掲げて見せる。
矢部くんに促されるままついたテーブルにいたのは、原さんと佐野くんと言う、当時から幼馴染という事で有名だった二人だった。
なんでも家が近所でご実家同士も仲が良く、幼稚園からの腐れ縁だという事で、当時はよくからかわれていた。
佐野くんもバスケ部だったこともあって矢部くんとはよく一緒にいたし、その繋がりからなのか原さんもこの二人とよく一緒にいたのを覚えている。
ただ、私は三人とは当時あまり接点がなくて、むしろ今日こうして一緒にテーブルについているのが不思議なくらいだ。
「牧村さんは今何してるの?仕事」
原さんが話を振ってくれて、私は急いで口の中のものを飲み込んだ。
「私は…なんていうか、事務?になるのかな。営業部署で見積もり作ったりとか、資料作ったりとか」
「げっ!営業?!大変そー!接待とかあるの?」
「あ、私はそういうのはなくて。うち、客先とのやり取りは全部男の人だから」
「へー。けど牧村さんが営業に出たら、なんか業績上がりそうやけどなぁ」
「……健太郎、あんたそれセクハラ」
「は?!どこが?!」
「牧村さんが、って!どー考えてもセクハラでしょ!!」
「はぁ?!や、そういう意味ちゃうわ!てかそりゃ聡子と比べたら、ーーー、ってぇ!!なにすんねん!!」
原さんに拳で思いきり後頭部を殴られた佐野くんは、頭を抱える。
私はつい笑ってしまった。
「高校のときと変わらないんだね」
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