かえってきたお兄ちゃん

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どうしてこんなことになったんだろう。 あの宗教にハマるまでは、うちは普通の家庭だった。 お兄ちゃんは入退院を繰り返していたけど、家族旅行したこともあったし 体の弱いお兄ちゃんを支え、皆で協力して、愛情に溢れる家族だったのだ。 宗教が私の家庭を壊した。 両親が宗教にハマってからは、何をおいても、その宗教の行事が優先で 食事前には、今までしなかった、お祈りのようなものも強制され 何かと私も宗教のイベント会場に連れて行かれた。 はっきり言ってウンザリしていた。 お葬式だって、親戚縁者を誰一人呼ばず、教団施設内で 誰ともわからない人々が葬儀に参列し、おかしな歌を歌い始めたのだ。 ただし、両親はそれをお葬式とは呼ばずに、復活祭と呼んでいた。 何かの宗教のアレンジじゃないの。バカみたい。 葬儀のあくる朝、私は2階の自分の部屋を出て、下に降りて驚いたのだ。 お兄ちゃんの死体が、まだお布団に寝かされているのだ。 「ちょっと、何でお兄ちゃんを火葬場に連れていかないの? ずっとこのままにしておくつもり?」 私は両親にたずねた。 「何言ってるの。焼いたりしたら、お兄ちゃん、戻ってこれなくなっちゃうじゃない。 復活するまで、待つしかないのよ?お兄ちゃんは死んだわけじゃないの。 生まれ変わるのよ。」 「かおり、心配しなくても大丈夫だぞ。もうすぐ、 お兄ちゃん帰ってくるからな。」 両親の目は普通じゃない。 でも、この人たちはこれが正しいことだと信じてやまない。 私はもう疲れ果ててしまった。 両親と言い争う元気もない。 でも、本当に、お兄ちゃんはまるで寝ているだけのような 安らかな顔をしていた。 両親の気が済むまで、こうしてお兄ちゃんを側におくのもいいのかも。 そして、私自身も、お兄ちゃんの体がこの世から消えてしまうことが悲しかったのだ。
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