かえってきたお兄ちゃん

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何が蘇ったのか。 おぞましい何か。 お兄ちゃんの皮を被った何かがドアを叩く。 ほぼ肉体が腐っている手でドアを叩くから、 叩く度に湿った物がぶつかるような嫌な音がする。 私はおぞましさに耳を塞いだ。 びちゃびちゃびちゃ。 「急にどうしたんだよぉ。開けろよー。」 声が半分笑っている。 助けて。母に助けを求めようとしたが、 あの正気ではない目を思い出してしまい諦めた。 きっとふざけあってるとしか思わない。 「なあに?騒々しい。ご近所めいわくでしょう?」 お母さんが大声で注意する声がした。 「お母さん!ダメ!」 私が叫んだ時には、もうお母さんの悲鳴が響いていた。 「お母さん!」 私は思わず、ドアをあけてしまった。 そこで私は信じられないものを目にする。 お兄ちゃんが階段の下でお母さんの喉元に喰らい付き、おびただしい血が、お母さんのエプロンを濡らしていた。 「きゃあああああああ!」 私は喉が裂けるほど叫んだ。もうお母さんの目は虚ろに開いているだけで、生の気配を消していた。なんていうことを。私の頬を涙が伝った。 振り向いたお兄ちゃんの口からは、真っ赤な鮮血が滴り、腐った皮を伝って廊下に血溜まりを作っていた。 お父さんは、まだ会社から帰っていない。助けて、お父さん! 私の太ももを熱いものが伝った。 「だめじゃないか。かおり。いい年をしてお漏らししちゃって。」
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