13人が本棚に入れています
本棚に追加
/24ページ
何が蘇ったのか。
おぞましい何か。
お兄ちゃんの皮を被った何かがドアを叩く。
ほぼ肉体が腐っている手でドアを叩くから、
叩く度に湿った物がぶつかるような嫌な音がする。
私はおぞましさに耳を塞いだ。
びちゃびちゃびちゃ。
「急にどうしたんだよぉ。開けろよー。」
声が半分笑っている。
助けて。母に助けを求めようとしたが、
あの正気ではない目を思い出してしまい諦めた。
きっとふざけあってるとしか思わない。
「なあに?騒々しい。ご近所めいわくでしょう?」
お母さんが大声で注意する声がした。
「お母さん!ダメ!」
私が叫んだ時には、もうお母さんの悲鳴が響いていた。
「お母さん!」
私は思わず、ドアをあけてしまった。
そこで私は信じられないものを目にする。
お兄ちゃんが階段の下でお母さんの喉元に喰らい付き、おびただしい血が、お母さんのエプロンを濡らしていた。
「きゃあああああああ!」
私は喉が裂けるほど叫んだ。もうお母さんの目は虚ろに開いているだけで、生の気配を消していた。なんていうことを。私の頬を涙が伝った。
振り向いたお兄ちゃんの口からは、真っ赤な鮮血が滴り、腐った皮を伝って廊下に血溜まりを作っていた。
お父さんは、まだ会社から帰っていない。助けて、お父さん!
私の太ももを熱いものが伝った。
「だめじゃないか。かおり。いい年をしてお漏らししちゃって。」
最初のコメントを投稿しよう!