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「私は一介のコンシェルジュですが、この仕事だけで月で暮らしていけるほど、この世界は寛容ではありません。私には別の仕事があります」
「別の仕事…」
ハマダさんは頷いた。
「そうです。むしろそちらが本業です。その仕事をするために月まで来たといっても過言ではありません」
リクは黙ってハマダさんの話を聞くつもりだった。
「私の本業には、高性能のコンピューターが必要です。ちょっとした事情があり、地球では処理速度の速いコンピューターを使うのが難しくなりました。研究分野というか業界というか、そういった狭い世界の中で活動するのが難しい状況に陥ったといった方がよいかもしれません。世界中をいろいろ探し回ったのですが、我々の希望に合うスペックのコンピューターを調達することができませんでした。ですが、それは意外なところにありました」
リクは目で頷いた。
「そうです、月です。ここには地球上でも最速の部類に入る高性能なマシンがたくさんありますが、需要はそれほどではありませんでした。そこで、我々はオフィスを丸ごと月に移転し、研究を再開しました」
ハマダさんの身の上話に興味はなかった。それとナカモトがどうつながっているのか、リクの関心はその一点だった。
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