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再び扉が開くと、リクは驚愕した。
目の前には地下鉄のプラットフォームがあった。プラットフォームといっても極めて小ぶりだ。地下鉄の車両一台分くらいの長さしかない。だが、確かにそこは「駅」だった。
「月に地下鉄があったなんて…」
リクが思わずつぶやくと、男は事もなげに言った。
「数分で着きます。お乗りください」
男が指し示す先には、四人ほどが乗れる小型の車両が停まっていた。流線型をした透明な外殻は銀色の卵を思わせる。大きさはサバーバンくらい。ピカピカに磨かれ、工場から出荷されたばかりのような輝きを放っていた。
「心配する必要はありません。とても安全な乗り物です」
男はそう言うと、さっさと車両に乗り込み、運転席と思われる座席に着いた。しかし、男の目の前には小さなディスプレイがあるだけで、運転に必要と思われる装置は何一つなかった。
「どうぞ、お座りください」
リクは勧められるまま、男の後ろの席に腰を下ろした。
小さな電子音と共に扉が閉まった。二人を乗せた車両は滑るように「駅」を離れた。
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