3.謎の男

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3.謎の男

 男が向かったのは、アポロ・タワーの入っているドームに隣接する小さな居留ドームだった。そこは三~五階建てのマンションが十数棟立ち並ぶ一般的な住宅地で、ドームの中央には小さな噴水と芝生や遊具を備えた小公園があった。夜間の今の時間に遊ぶ子どもはおらず、ドーム内はひっそりと静まり返っている。 「こちらです」  男はドームのはずれにある小さな建物を指差した。何の変哲もない三階建てのマンションだった。月面コロニーの平均的な住まいと言えた。  マンションの狭いエントランスを横切り、男はエレベーターを呼んだ。三階しかないので、すぐに扉が開いた。 「三階です」  男はセンサーに腕時計型のIDデバイスをかざし、ボタンに触れた。扉が静かに閉じた。 「えっ」  リクはすぐにおかしいことに気付いた。エレベーターは下降していたのだ。男はすぐにリクの表情に気付いた。 「三階は三階でも、地下三階です」
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