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「ごめん、こんな所に呼び出して」
「いえ」
放課後。私は手紙の差出人に呼び出され、校舎裏に来ていた。
あの手紙の差出人。それは、私の親友みゆ──────ではなく、彼女のお兄さん、芹沢リュウさんだった。みゆの家族ならば、宛名が同じ芹沢になるのは当然の事。
つまり私は、ラブレターの"代筆の代筆"を書かされていたらしい。みゆもまさか、兄の想い人が私とは微塵も思っていなかったのだろう。
「あの、ごめんね、突然あんな変な手紙送って。気持ち悪いよね、あんな文章…」
たどたどしい言葉で気持ちを伝えようとするリュウ先輩。あの、その気持ち悪い文章書いたの、私なんですけどね。
「でもやっぱり、メールとかより手紙のほうがちゃんと気持ち伝わる思って……!」
代筆よりはメールの方が本心伝わるんじゃないでしょうか。
「だから、その……よかったら、俺と……!」
顔を真っ赤にして手を差し出すリュウ先輩。きっと、代筆といえどかなりの勇気を振り絞ったんだろうな。
だから私も、そんな勇気に応えるために率直な想いを伝えることにした。
「ごめんなさい」
リュウ先輩はショックを受けているようだった。でも、気持ち悪い文面とか言われた私の方がショックだった。
ちなみに、みゆの言っていた報酬はリュウ先輩のおごりの焼肉食べ放題だった。美味しかったし嬉しかった。けど、やっぱり好意には繋がりませんでしたとさ。
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