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ある日、親友のみゆから一通のメールが送られてきた。
『ラブレターの文面を一緒に考えてほしい。少し引くくらい強烈な奴希望。報酬有』
それは、いわゆる手紙の代筆という奴であった。
「みゆの奴、また随分古風な事を……」
最初にこのメールを見た時、私は思わず3度くらい文面を読み直してしまった。電子メールやSNSでの告白も珍しくない昨今、手書きの手紙など時代に取り残された遺物。博物館に展示されていてもおかしくない代物である。そもそも、みゆに好きな人がいるなんて、毎日彼女と一緒にいながら微塵も気づかなかった。
だがまあ、他ならぬみゆの頼み。断るわけにはいかない。
「一肌脱ぐとしますか」
それからほどなくして、まず原文となる文章が送られてきた。
『好き。愛してる』
「……まあ、言いたい事はよくわかる」
だが、流石にこれでは飾り気がなさすぎるので、最低限の情報だけを貰い一から文を構成する事に。
そして5分ほどして、私の前にそれらしい文章が出来上がった!
『私は前から密かにアナタのことを愛していました。後ろの席からあなたを見る度、私の胸は熱く燃えます。もうあなたなしではいられません。
ここに名前を入力』
「……ちょーっとやりすぎたかな」
少し引くくらい、と言われたので張り切って書いてみたものの、これは少しどころではないかもしれない。これが私の脳内から出てきたという事実に戦慄する。しかし、一応完成はしたのでみゆに送ってみた。すると……。
『ちょー気持ち悪くて最高』
なんと素早い返答。この怪文書がまさか一発で採用されるなんて。
「これ褒められてるよね…?」
正直、ラブレター云々よりみゆにどう思われたかの方が気になってしまって仕方がないが、ともかく務めは果たしたので今日は枕を高くして寝られそうだ。
「それにしても、あのみゆに好きな人かあ…ふふっ、なんか想像つかないな。相手は誰だろう? 明日、しっかり問い詰めなくちゃ」
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