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 11月に入ると田尻野町の朝もめっきり冷え込むようになった。  大輝の捜索は間断なく継続されていた。 職場の行き帰り、そして電車の中でもずっと周囲の人間を観察していた。また休日になると田尻野町やその周辺で建設中のビルやマンション、商業施設がないかを調べ、それぞれの現場へと赴いた。  大輝の調査はすべからく徒労に終わったが、彼の執念が減退することはなかった。いつか必ず男は現れる。殺人犯は往々にして自分が犯した犯罪の現場に舞い戻るのだという。忍耐強く観察を続け、調査を継続していくことだけが大輝の生きる動機(モチベーション)となった。  高橋さんは、どうやら彼氏と別れたようだった。花音が殺された日、高橋さんは彼氏とふたり、部屋で愛を分かち合っていた。その一方で花音は誰かに首を絞められ、雑木林の中に捨て置かれた。高橋さんとしてもそれが相当こたえたようだった。彼女が彼氏と別れたことを大輝はなんとなく察した。
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