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 8月の暑い時期だった。アパートの裏の雑木林でちょっとしたボヤ騒ぎがあった。ボヤは雑木林の一角をほんの少し焼いただけで鎮静したようだ。  高橋さんによると夕方から夜にかけて何度か不審な男を見かけたという。 男はアパート裏手の空地で、ビール片手にぼんやりとタバコをくゆらせていたそうだ。作業着を着ていたので恐らくは建築関係の仕事をしているのだろう、と高橋さんは語った。  男は黒っぽい野球帽を被り、濃い色のサングラスをかけていたそうだ。高橋さんは、ちらりとだけ男を一瞥すると自分が住む202号室に逃げ込むのが常だった。今回のボヤは男が残したタバコの火が原因かもしれない。
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