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男の行先はいまや明白だった。男は土谷コーポへと向かう一本道を進んでいる。この時間にこの道を歩く人が目指す先はただひとつだ。
男は土谷コーポが見渡せる場所まで近づくとタバコに火をつけた。男は恐らく駅で購入したであろう缶ビールを開けると少しだけそれを呑んだ。続いて、男は静かにまた歩き始めた。間違いない、男は建物の裏側に回ろうとしている。
大輝は男の様子を慎重に窺いながら、身をかがめ男とは反対の方向から土谷コーポの裏側へと回った。壁に身を隠しながら大輝は男を観察した。
男はタバコを捨てると暫く土谷コーポの二階のあたりを茫然と眺めていた。
再びタバコに火をつけるとやがてゆっくりと雑木林の方へと歩いて行った。
犯人は自ずと事件現場へと戻ってくる……。男もそういった犯罪者心理によって雑木林へと誘われたのだろう。大輝はそう考えた。
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